前世療法は「目的論」の立場
認知の問題ばかり見つめ、いつまでも過去のトラウマに捕らわれていては、人は前に進めません。前世療法も、アドラー心理学も、物事の捉え方を原因論ではなく、目的追及を重視します。今ここを生き、未来を作り変えていく思考回路に導きます。前世療法は「魂の目的」を追求するために前世に目を向けるのです。前世に原因をおしつけて今を克服しないのは理解が浅すぎます。内なる世界に向かうのは、入口であり、いつまでも、そこに足を止めるのは愚かなことなのです。禅に伝わる精神発達の段階の解説「十牛図」でいえば、認知療法やマインドフルネスは、五番目までの教えでしかありません。その意味では、大乗仏教に対する小乗仏教と似ているかもしれません。「上求菩提、下化衆生」の、下化衆生が欠落しているのです。心が健全で、客観的に人を見れるようになった人が本当の意味で人を癒すことができるのです。クライアントを共感の癒しの先に導き、甘えから脱出して、魂の目的にめざめ、自分の足で歩いてもらうためには、人は甘えを捨て、他人の思惑への依存を捨て、勇気を出して人生の主人公にならねばなりません。承認欲求を捨てることが大切です。
今と未来に積極的に立ち向かう生き方
認知療法の本ばかりを何冊も読むよりも、「大学」「中庸」「論語」「老子」「易経」を繰り返し読むほうがよほど有益です。自分を客観視するために認知療法や人格障害や発達障害の知識を学ぶことも有益ですが、そのレッテルやラベルで自分を縛り付けることは自分の成長を妨げますので避けましょう。どこにいるかがわかったら、次はどこに向かっていくかに目を向けるのです。つまり、「魂の目的」を悟り、脱皮をはかるのです。そして他力、天佑神助というのは、人の脱皮を助け、促進し、上のランクに引き上げてくれるのです。他力による禅定、他力による覚醒、という道があるのです。これがわかれば、自分の限界は超えられます。自分のラベリング、レッテル貼りを破れます。古い自分が消滅し、新しい自分が生まれるのです。ほんとうの自己改革の道がそこから開けてくるのです。前世療法によって、魂が生まれ変わり、転生しながら進化していく存在であると悟ることに意義があります。原因を前世に求めて、そこに安住するために前世療法をするのではありません。