催眠という現象は、昔から悪魔払いや祈祷などの中で、
伝統的に活用されてきました。
催眠(hypnotism)という言葉そのものは、19世紀半ばの
イギリス人医師ジェームズ・ブレイド(1795-1860)が初めて使用しました。
精神科医フロイト、ユングといった人々の研究によって、人の意識は、
表面的な意識と、深く沈潜している無意識が存在することが明らかにされました。
催眠状態とは、無意識(潜在意識)が活発に働き、表面の意識(顕在意識)が
鎮静された状態であることがわかってきたのです。これは、非常に暗示にかかりやすい、意識が集中している状態です。
人の意識全体のうち、たえず意識されている顕在意識の部分は
一割にも満たないもので、圧倒的に大きな領域を潜在意識が占めていると考えられています。
催眠状態で、直接、潜在意識に接触すると、さまざまな情報を得ることができます。
したがって、催眠を活用すればメンタル疾患の治療に必要な情報が得たり、
暗示を与えて、行動修正を行うことも可能です。
催眠療法を「医療催眠」として確立させたのは、
アメリカ人精神科医ミルトン・エリクソン博士(1901〜1980)です。
エリクソン博士の業績により、1958年にアメリカ医師会は、催眠療法を有効な治療法の一つとして正式に認定しました。
催眠療法の代表的な手法が、催眠暗示療法です。
これは催眠状態に導いた患者に、有効な肯定的行動を暗示することで、
催眠から覚めた後にもその行動を実行することが容易になるというものです。
ダイエットや禁煙、悪習慣を断ち切ることなどのほか、受験などの能力発揮、
パニック障害、さまざまな不安や恐怖症を治療するのにも活用されています。
この他、幼児退行催眠といって、患者も忘れていた幼児期のエピソードを
思い出させることでトラウマを解除するという手法も行われています。
この手法の発展したものが、
インナーチャイルドセラピーや
前世療法といわれる手法です。