家族療法
患者本人に働きかけるのみではなく、患者の家族全体になんらかの
働きかけを行うことで、問題を解決しようとする心理療法です。
症状の原因が家族関係の歪みにあるという考え方に立脚し、家族関係の改善と変容を目指します。
家族療法においては、家族とは「個々の成員が影響を相互に
与えあうシステム」と考えます。
患者に生じた問題とは、家族間で互いに影響を与え合う
「原因と結果の悪循環」が形成されているという見方をします。
「精神医学は対人関係論である」としたサリバン(Sullivan, H. S.)は、
母子相互作用に焦点を当てた治療を行いましたが、ベイトソン(Bateson, G.)は、
さらに家族コミュニケーションの視点から、「二重拘束仮説」(1956年)を発表しました。
ベイトソンが唱えた二重拘束とは、「@一次的否定命令」「A一次的命令と、
より抽象的なレベルでそれとは相容れない二次的否定命令」
「B被害者が二重拘束の場から逃れることを禁止する三次的命令」の三つから構成されています。
二重拘束のとらわれに陥る理由は、「AかBか」という二者択一の思考に
知らず知らずのうちに陥っているためです。二重拘束から思考を解放するには、
「AもBも」あるいは「AでもなければBでもない」と思考できる新しい視点を持つように患者の気づきを引き出すことが必要です。
精神科医の斉藤学氏の著書に
『「家族神話」があなたをしばる 元気になるための家族療法』(NHK出版)があります。
この本は、日本人向けに「家族療法」を説いた本として一般の人にも役立つものです。