素直ということの本当の意味と前世療法
これまでずっと「自分の思いに素直になろう」として生きてきた人がいました。それで、自分の感情や気分にずっと素直にしていたら、最終的に「うつ病」になってしまったのです。これは、素直ということを正しく理解していない人にしばしばみられます。多くの場合、「素直」について誤解しています。「素直」というのは自分の気分や感情のままに行動することではありません。「ありのまま」に生きることでもありません。それは単なる「気分屋」「わがまま」です。本当の「素直」とは、「素」の文字が御主人公の「主」から「糸」が「直」に降りてきているという漢字の字義のとおり、自分の中にある「正しい心」「理想の心」に対して忠実であることです。この心の働きを、陽明学では「良知」といいます。
仏教では「仏性」といい、神道では「神の分魂(わけみたま)」とか、「直毘(なおひ)の魂(みたま)」といいます。ギリシャ哲学ではソクラテスがこれを「イデア」と呼びました。私は中江藤樹が庶民に教えた「良知」という言葉がわかりやすいのでこれで説明をしてます。
「ありのままで」で良いわけがない
松下幸之助さんも「素直に生きること」を説いていて、それはこの「良知」と同じ意味で使っています。本当の「素直」とは、自分がどう生きるべきか、今、どのように努力をし、どのように困難に向かっていくのか、その「あるべき姿」を指し示してくれる「良知」を見つめて、それに忠実であろうとすることなのです。それが本当の「素直」ということです。子どもには「正しい道に対して素直でありなさい」と説明すれば理解されやすいかもしれません。道でも義でも、あわせて道義でもよいですが、私達が見つめるべき中心があるのです。そこからずれてきた時、どこかおかしい、どこか病んでいる。改善点があると気がつくことが大切です。良知が働けば、暗い気分にいつまでもひきづられていてはいけないと気がつくということです。自分にとっての正しい道が見えないときには、前世療法を受けてみることをおすすめします。
素直とは、わがままに生きることとは違う
流行りのスピリチュアルの傾向は、まさに「ありのまま思考」の追求ですが、これは、きわめて危険で間違った道であることを知っておくべきです。エゴを追求すれば、心はどんどん冷たくなり、愛の念から遠ざかります。冷淡で重たい心になっていくので、やがては、心を病み、うつ状態になってしまったり、生きがいを見失うことになるのです。人としてのなすべきこと、人としての進むべき道、そこには、たえず愛と真心があります。愛と真心に立脚して進む時には、試練もあるものなのです。その試練を乗り越えることは労苦ですが、それを乗り越えると大いなる喜びがやってくるのです。「鬼滅の刃」というマンガが大人気になった理由は、愛と真心に根差して苦難に立ち向かう主人公の生き方に人々が感動したからなのです。この主人公は、優しく素直でそして強い人です。「ありのまま」などと耳にやさしいことを言ってあなたをたぶらかす者たちにだまされてはなりません。